住宅から逃げる熱のうち、窓とそのすき間が占める割合はおおよそ3分の1にもなります。高断熱高気密住宅では、窓やサッシの性能によって住宅全体の断熱性が大きく変化するため、窓の選択はとても重要になります。
従来の住宅では断熱性があまり考慮されていないため、窓やサッシも断熱性の低いものが多く、冬場は室内の暖かい空気が窓から外に逃げて、冷気が室内に入り込むため、室内の温度が下がり足元も冷えてしまいます。
高断熱高気密住宅でも、窓やサッシの周囲まできちんと断熱されていなければ、断熱性能は低下します。複層ガラスや樹脂サッシを用いた場合でも、すき間の処理が不十分だと窓やサッシのすき間から熱が逃げていきます。これでは断熱性能の高い窓やサッシを入れる意味がありません。
高断熱高気密住宅では、窓の性能がより重要になります。従来工法の住宅では、断熱材が薄くすき間の処理も不十分なので、屋根や床下、すき間から逃げる熱のほうが多く、窓の性能はあまり問題視されませんでした。
高断熱住宅では、住宅全体の断熱性能が高いので、相対的に窓の断熱性能が重要視されるのです。
断熱性能を高める窓
住宅における窓の役割は、採光、換気、開放感などが挙げられますが、その中で断熱に関連するものといえば次の3点です。
● 断熱性能 ： 複層ガラスなどを用いて窓からの熱損失を防ぐ
● 日射遮断 ： 日差しを遮断して太陽熱を防ぐ
● 気密性能 ： すきま風を防ぐため窓の気密性を高める
これらの性能を満たすため、窓に使われているガラスや枠の部材を検討する必要があります。ガラスには複層ガラスやLow-Eガラスなどがあり、枠の部材は従来のアルミの他に、樹脂や木材を用いたものがあります。窓の断熱性能にはいくつかの基準があり、費用対効果に見合った窓を選択することが重要です。
窓の断熱性能表示制度
経済産業省では、窓やサッシの断熱性能の目安となる「窓の断熱性能表示制度」運用基準を改定し、平成23年4月1日から施行されています。
従来の「省エネ建材等級ラベル」は、窓、ガラス、サッシの3つに分かれていましたが、「窓ラベル」表示に一本化されることになりました。
省エネ建材等級は、窓開口部の熱貫流率によって4つに区分され、★のマークで表されます。★が多いほど断熱性能が高いことを表します。
熱貫流率の測定方法は、日本工業規格(JIS)A4710-2004（建具の断熱性能試験方法）に定める方法、又はこれと同等の方法により測定した熱貫流率の数値を用います。
| 表示区分 | 等級記号 | |
|---|---|---|
| 窓 | 熱貫流率が2.33以下のもの | ★★★★ |
| 熱貫流率が2.33を超え3.49以下のもの | ★★★ | |
| 熱貫流率が3.49を超え4.65以下のもの | ★★ | |
| 熱貫流率が4.65を超えるもの | ★ |
熱貫流率とは
窓の両側で温度が異なるときに、暖かい方から冷たい方へと熱が移動します。窓の両側で温度差が1度あった場合、単位時間あたりに1㎡の面積を通過する熱量をワットで表したものが「熱貫流率（U値）」です。数値が小さいほど断熱性に優れていることを表します。
高い断熱性 窓ガラスの種類
複層ガラスは外部と内部の間に空気層を持ち、窓面の結露や冷気流を抑えることができます。さらに高い断熱性を持つトリプルガラスは、断熱性能が複層ガラスの約1.7倍なので、結露の可能性がさらに低くなります。また、空気より熱伝導率が小さいアルゴンガスを封入して断熱性能を高めたガス入複層ガラスもあります。
複層ガラス
外側のガラスと内側のガラス間に乾燥空気が封入され、内側ガラス面の結露や冷気を抑えることができます。寒冷地では断熱性能が不足するため、室内の湿度によっては結露する場合があります。
トリプルガラス
トリプルガラスは3枚のガラスと2層の空気層を持ち、さらに断熱性能を高めたガラスです。複層ガラスと比較した断熱性能は1.7倍となり、結露もほとんど発生しません。窓の断熱性能を示す「省エネ建材等級」において、最高等級を取得しています。
LOW-Eガラス
LOW-Eガラスは遮熱タイプと断熱タイプの2種類があり、どちらもガラス面に太陽光を遮断する金属フィルムが薄くコーティングしてあります。遮熱タイプは太陽光を遮断して熱の侵入を抑え、紫外線もカットします。断熱タイプは太陽光を取り込み、暖房熱を窓から逃しません。
ガス入複層ガラス
複層ガラスの空気層に気体の断熱材と言われるアルゴンガスを封入しています。アルゴンガスは乾燥空気と比べて熱伝導率が低く、窓の熱貫流率を小さくしています。
真空ガラス
ガラス間に真空層を持ち、高い断熱性能を実現しています。外部と内部のガラス間にある真空層では熱伝導も対流も起こらないため、複層ガラスと比べて2倍の断熱性能を持ちながら、厚みは従来のガラスとほぼ同様で、既存の窓でも交換が容易です。
