家族全員が健康で快適な生活を送るためには、住まいの環境を整えることが重要です。しかし、日本の住宅業界は、住宅が健康的な生活に大きな役割を果たしていることを十分に認識していません。
中でも、住宅の断熱は未だに不十分で、日本の住宅の7割は適切な断熱対策がされないままとなっています。日本でこれから進む高齢化社会に向け、心筋梗塞や脳卒中の原因となる冬場の寒さを防ぎ、健康寿命を伸ばすためにも、今後は住宅の断熱対策がますます重要になっていくでしょう。
平均寿命と健康寿命
平均寿命、健康寿命は平成22年度厚生労働省の資料より
「健康寿命」という言葉をご存知でしょうか?健康寿命とは、支援や介護がない状態で日常生活を送れる期間のことです。平均寿命と健康寿命の差は男性で約9年、女性は約12年となっています。
WHO加盟国の中で日本は世界一の長寿国です。男性の平均寿命は約80歳、女性は約86歳となっていますが、実際に自立した生活が送れる期間は10年ほど短いと考えてよいでしょう。老後の健康を考える上で、平均寿命だけでなく、健康寿命にも目を向ける必要があります。
ヒートショックを防いで健康寿命を伸ばす
要介護状態の原因となる疾患(平成22年 厚生労働省国民生活基礎調査の概況より)
健康寿命を伸ばすためには、生活習慣を改善し、寝たきりや要介護状態の原因となる疾患を予防することが大切です。
要介護状態の原因として最も多いのは、24.1%の脳血管疾患(脳卒中)、次いで認知症が20.5%で続きますが、認知症の原因となった疾患の中にも脳血管疾患(脳卒中)が30%ほどあり、全体的に見ると脳卒中が3分の1を占めます。
また、その他の中には心疾患が3.2%ほどあります。脳卒中や心疾患は、風呂場や冬場の廊下など大きな温度差のある場所で発症することが多く、その健康被害は「ヒートショック現象」と呼ばれるようになりました。
ヒートショックとは
ヒートショックとは、大きな温度差により、血圧が急上昇することで起こる健康被害のことです。心疾患や脳卒中もヒートショックによって引き起こされることが多く、特に冬場の浴室や脱衣所は温度差が大きいため注意が必要です。
2011年にはヒートショックが原因とみられる入浴中の急死が17000人に達しました。これは1年間の交通事故死亡者数の4倍近くにもなります。また、12月から1月にかけては入浴時のヒートショックが、最も少ない8月と比べて11倍に急増します。
暖房のない冬場の浴室や脱衣所は、室温が10度以下に下がることもあり、そこで裸になると寒さにより血圧が急上昇します。さらに、血圧が上昇したまま熱い湯につかると、今度は血管が広がり血圧が急低下します。血圧の急上昇や急低下は、ヒートショックの原因になります。
健康寿命を伸ばすための重要なポイントは、冬場の室内で寒い場所を作らないことです。死亡率や疾患の発生率は、冬場が一番高くなります。ヒートショックを防ぎ、健康寿命を伸ばすためには、住宅の断熱が大きな役割を果たします。