住宅の中で大きな面積を占め、常に外部と接触している壁には、雨風や夏の暑さ、冬の寒さを防ぐという重要な役割があり、壁の断熱が住宅全体の断熱性能を決める大きなポイントになります。
壁の断熱は気流のコントロールが重要です。いくら壁に断熱材を詰めても、気流止めが不十分なままでは断熱性能が保てず、湿気の侵入を防ぐことはできません。冷たい空気による結露も発生し、カビやダニの原因となります。
壁の断熱工法 内断熱と外断熱
壁の断熱は大きく分類すると、通称「内断熱」と呼ばれ、壁の内側に断熱材を充填する充填断熱と、通称「外断熱」と呼ばれ、壁の外側に断熱材を張る外張断熱の2種類があります。
どちらの工法も、躯体面積の中で大きな割合を占める壁を断熱して、住宅全体の断熱性能を高めるという役割があります。
また、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造、木造、マンションといった建物構造の違いによって断熱工法は変わり、最近では内断熱と外断熱の両方を施工する「付加断熱」という工法も登場しています。
他には、各工務店や建築業者が展開するオリジナルの断熱工法もありますが、基本的な考え方は従来の断熱と同じです。
従来の土壁と現代の断熱材
日本の住宅には昔から自然素材の土壁が使われていました。土壁は高い調湿機能を持ち、湿気や結露が多い日本の気候に向いた建材ですが、断熱性能は現在使われている断熱材と比べてはるかに低く、乾燥するとすき間ができるため、冬場の寒さには対処できませんでした。
戦後に入り、断熱の重要性が少しずつ広まるにつれ、住宅にも断熱材が入るようになりました。断熱材を入れた住宅の断熱性能は向上しましたが、土壁と違って調湿機能は劣り、製造に化学物質を多用しているため、今度は湿気による結露や、化学物質過敏症・シックハウス症候群などの問題が発生するようになりました。
結露によって柱や壁の内部がダメージを受けると、住宅の寿命は大きく縮まります。また、湿度の高い環境ではダニやカビが発生するため、アレルギーの原因となります。
室内の温度環境を適切に維持することは、快適な生活のための重要な要素です。しかし、その役割を担う断熱工法や断熱材選びは、湿度や結露にも対処できるものや、人体に影響を及ぼさないものが求められます。
気流止めの重要性
気流止めとは、壁の上下を塞いで壁内部の空気の動きを止めることです。
壁の断熱は、断熱材の厚さだけでは決まりません。いくら壁に断熱材を詰めても、気流止めができていない住宅は、断熱性能が保てず、湿気の侵入を防ぐことはできません。
壁の内部の空気は、室内が暖められると少しずつ温度が上昇し、壁の上部へ行こうとします。その上部が気流止めで塞がれていれば、空気はそのまま壁の中にとどまりますが、上部が塞がれていない場合は、天井へ抜けてしまいます。
上部に抜けた空気の代わりに、床下から冷たい空気が侵入するので、壁の内部はいつまでも温まらず、冷たい空気による結露も発生します。
壁の内部に断熱材を詰めても、壁の上部である屋根と、壁の下部である床下の接続部分が塞がれているかどうかで、住宅全体の断熱性能が大きく変わります。
住宅メーカーの中には、単に厚く断熱材を詰めるだけで高断熱・高気密を謳う会社もありますが、実際は気流止めがなく、断熱性の低い住宅を販売している場合があります。
また、断熱に対する知識がない業者や工務店が施工した場合も、正しい気流止めができず、断熱性能は低下します。